「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓。病に侵されても自覚症状が少ないため
気がついたときには、すでに病態が進行していることが多くあります。
肝臓にとって長年の脅威であったウイルス性肝炎への対策は
新薬の登場で大きく改善が見込める一方で
生活習慣の変化などから脂肪肝が新たな課題となっています。
脂肪肝の早期発見・治療を目指し、キヤノンメディカルシステムズは
国内外の先生方との共創によって、エコーで肝臓を非侵襲的に検査する技術を開発してきました。
また技術開発のみならず、医療従事者、患者さん、地域への啓発活動にも取り組んでいます。
本誌では脂肪肝の現状や、脂肪肝診療にまつわる皆様の活動をご紹介し
これからの脂肪肝対策について、ともに考え、次の一歩につなげていきます。


PROFILE

岐阜大学医学部を卒業後、国家公務員共済組合連合会 虎の門病院に入職。内科レジデントを経て肝臓内科で診療に従事し、医員、医長として経験を積む。現在は同院肝臓内科部長および臨床研究センター長を務め、長年にわたりウイルス性肝炎から脂肪性肝疾患まで肝疾患診療に携わる。

生活習慣の変化とともに急増し、いまや社会課題となりつつある「脂肪肝」。
痛みや自覚症状がほとんどないまま進行するため、つい放置されがちですが、
実は肝臓だけの問題ではない深刻なリスクを秘めています。こうした脂肪肝診療の最前線に立つのが、
虎の門病院の肝臓内科部長であり、脂肪肝診療ガイドラインの作成委員長も務める芥田憲夫先生です。
臨床と研究の両面から脂肪肝に向き合う芥田先生に、疾患の現状、早期発見のポイント、
そして社会全体で取り組むべき課題について伺いました。
取材日:2025年11月21日(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院)

ウイルスから脂肪肝へと
主役が変わる肝疾患の今

これまで日本の肝硬変・肝がんの最大の原因は、B型・C型といったウイルス性肝炎でした。ところが近年、治療法が大きく進歩したことで状況が一変しています。C型肝炎は直接作用型抗ウイルス薬(DAA)によってウイルス排除が可能になり、B型肝炎についても核酸アナログ治療でウイルスを鎮静化できるようになりました。こうした抗ウイルス治療の進歩によって、ウイルス性肝炎を原因とする肝硬変・肝がんは着実に減少しています。その一方で、今主役になってきているのはMASLD(アルコールを飲まない脂肪肝)やアルコール性肝疾患などの非ウイルス性肝疾患です。いまや、肝硬変・肝がんの主体がウイルス性から脂肪性へと移りつつあります。

脂肪肝が増加している最大の理由は、生活習慣の変化による過食と運動不足によるカロリー過多です。さらに、日本人には肝細胞の内部で脂肪を処理する機能に関わるPNPLA3遺伝子の働きが弱いタイプが多いとされており、「脂肪肝になりやすい体質」の人が多いことも影響している可能性があります。つまり、ライフスタイルの変化と日本人の体質的な背景が重なり、脂肪肝は今や社会的な問題になっているのです。

肝臓の役割

● 栄養の代謝

食事で摂った糖質を分解・貯蔵し、必要に応じてエネルギーとして全身へ供給します。


● 有害物質の解毒

アルコールやアンモニアなどを無毒化し、体外へ排出します。


● 胆汁の生成

脂肪の消化を助け、老廃物を体外へ出す胆汁をつくります。

脂肪肝とは?

脂肪肝とは、肝臓に脂肪が過剰にたまった状態を指します。大きく「アルコール性」と「非アルコール性」の2種類に分けられ、近年特に増えているのが、あまりお酒を飲まない人に起こる代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD) です。 エネルギーの過剰摂取が主な原因で、余った糖質や脂質が中性脂肪に変わり、肝臓へ蓄積されていきます。本来、健康な肝臓に含まれる脂肪は3〜5%程度ですが、20〜30%を超えると脂肪肝と診断されます。太っている人しか脂肪肝にならないわけではなく、近年では、極端なダイエットが原因で脂肪肝になるケースも指摘されています。また脂肪肝は自覚症状がほとんどないまま進行することが多いため、早期発見がとても重要です。

出典:虎の門病院広報誌「T-MAGAZINE」vol.16 
※出典を基に編集部にて再作成しています

肝硬変を背景にした肝癌の成因別頻度(全国調査)

Hepatol Res 2024;54:763:-772. 2023年6月 第59回肝臓学会総会(奈良)

ウイルス性肝炎が減少し、アルコール性肝疾患や代謝機能障害関連脂肪肝炎が増加
※本図は出典を基に、視認性向上を目的として再作成しています。

肝臓だけでは語れない
脂肪肝が招く全身リスク

脂肪肝は自覚症状が乏しく、気づかないまま放置されがちな疾患ですが、実際には“肝臓だけの病気”と捉えるべきではありません。私は脂肪肝診療の現場で、常にその危険性を強調しています。当院で脂肪肝500例を解析したところ、心筋梗塞や脳卒中といった心血管系疾患は年間1%の頻度で発症し、肝臓以外の悪性腫瘍は年間0.8%、一方で肝がんを含む肝疾患の発症は年間0.3%にとどまりました。つまり、脂肪肝の患者さんでは肝臓の病気よりも、むしろ肝臓以外の疾患のほうが高い頻度で起きているということです。悪性腫瘍の中では特に大腸がんに注意が必要で、胃がん、食道がん、婦人科がんなども一定のリスクがあります。脂肪肝を診る際に大切なのは、肝臓という“木”だけを見るのではなく、患者さんの身体全体という“森”を見ることです。脂肪肝は肝臓の中だけで完結する病気ではなく、全身の健康に深く関わる疾患であり、その視点を持つことが肝要だと考えています。

脂肪肝から発生する病気

脂肪肝から発生する病気は、肝臓の疾患だけではない

出典:虎の門病院広報誌「T-MAGAZINE」vol.16
※出典を基に編集部にて再作成しています

“ALT(エーエルティー)30”に注目して
脂肪肝を早期に見つける

脂肪肝は自覚症状がないため、健康診断でどれだけ早く気づけるかが非常に重要です。その目安としてまず注目すべきなのが、血液検査で測定されるALTです。ALTは、肝臓に負担がかかったときに血液中へ漏れ出す酵素で、言い換えると“肝臓の状態を知らせるアラーム”のような役割を持っています。日本肝臓学会は2023年、「ALTが30U/Lを超える場合は、慢性肝臓病が隠れている可能性がある」と注意を促す『奈良宣言』を発表しました。ところが、現在の健康診断ではALTが50U/Lを超えた時点で受診を勧める仕組みになっており、30〜50U/Lの人は“正常範囲”として扱われ、見過ごされるケースが少なくありません。しかし実際には、この“少しだけ高い”と思われがちなALT30〜50U/Lの人の中に、多くの脂肪肝の方が含まれています。当院で診断した脂肪肝1万例のデータでも、脂肪肝の半数がALT>30U/Lでした。さらに、肝線維化が進んだ、いわゆる“危険な脂肪肝”の方はALT>30U/Lで8割以上を拾い上げられることが分かっています。つまり、ALT>30U/Lは「ちょっと高いだけだから大丈夫」ではなく、肝臓からの確かなSOSサインです。医療者だけでなく、患者さん自身も「ALTが30を超えたら注意すべき状態」という認識を持つことが、早期発見への第一歩になると考えています。

このALTに加えて、ASTや血小板の値、年齢などの情報を組み合わせて肝臓の線維化を推測するFIB-4 indexという指標があります。しかし現行の特定健診には血小板の検査項目が含まれていないため、FIB-4 indexを計算できないという課題があります。脂肪肝の早期発見のためには、こうした健診制度の見直しも大きなポイントになるのではないでしょうか。

エコーによる定量化が
変化を捉える診療に役立つ

近年、エコー検査によって肝臓の脂肪量を数値として評価できる技術が導入され、脂肪肝診療の選択肢が広がりつつあります。これまでは脂肪のつき具合を主に視覚的な印象で判断していましたが、脂肪化を定量的に示す指標が得られることで、治療の参考情報として活用できる場面が増えてきました。

特に意味を持つのは、時間の経過とともに脂肪量の変化を見ることだと考えています。食事や運動などの生活習慣改善、あるいは今後治療薬が登場した際には、脂肪量の推移が病態改善の指標として役立つ可能性があります。ただし脂肪量の変化は、必ずしも改善だけを示すわけではありません。脂肪肝では肝硬変へ進行する過程で、逆に脂肪が減ってくる「Burned-out現象」が起こることが知られています。このため、エコーによる脂肪化定量検査は、経時的な変化を捉えるための一つの指標として活用の幅が広がっていくのではないかと考えています。

“見える化”が支える
生活習慣改善と治療効果

脂肪肝は生活習慣の改善によって予防・改善できる疾患です。診療の場では“変化を数字で確認すること”を重視し、前回との比較で良くなっているのか悪化しているのかを患者さん自身が実感できるようにしています。肝機能(AST/ALT/γGTP)、中性脂肪やHDLコレステロール、体重、体脂肪率などを毎回測定。また、変化を“見える化”する手段としてエコーによる脂肪化定量検査も活用しています。こうした数値の改善は大きなモチベーションとなり、生活習慣の改善を継続する力にもつながります。

体重減少の目安としては、BMI≧25kg/m²(肥満)の場合は体重5%減で肝脂肪化、7%減で炎症、10%減で線維化が改善するとされています。一方、日本に多いBMI<25kg/m²(非肥満)の脂肪肝では、3〜5%の減量で肝脂肪化が改善すると報告されています。食事は飽和脂肪酸や炭水化物を控え、不飽和脂肪酸や食物繊維を多く含む“地中海食”を推奨しています。運動は、中等度の負荷であれば週150分以上(1日20分目安)、高強度であれば週75分以上(1日10分目安)の継続が効果的です。

こうした生活習慣改善をより確実に実践していただくため、当院では高齢者の脂肪性肝疾患患者さんを対象に、6日間の「脂肪肝改善入院」を実施しています。理学療法士による運動指導と管理栄養士による食事管理を集中的に実施。この入院を半年ごとに繰り返すことで、生活習慣改善へのモチベーション維持につながり、肝機能や心代謝系危険因子の長期的改善を確認しています。

脂肪肝を防ぐ食品 オサカナスキヤネ

脂肪肝を防ぐために、1日の食事の中で下記の8品目を積極的に摂取するよう心がけます。
1日で摂るのが難しいときは、3日で8品目を摂るようにします。

出典:虎の門病院広報誌「T-MAGAZINE」vol.16 
※出典を基に編集部にて再作成しています

健診・医療・個人の変化で
脂肪肝を見逃さない社会へ

脂肪肝をはじめとする肝疾患を減らしていくためには、患者さんだけでなく、かかりつけ医、専門医、行政、そして国がそれぞれの立場で取り組んでいく必要があります。まず大切なのは、脂肪肝が「症状がないまま進行する病気」であるという認識を社会全体で共有することです。脂肪肝は、肝硬変や肝がんといった肝疾患だけでなく、心筋梗塞や脳卒中、大腸がんをはじめとする悪性疾患とも関連します。その意味でも、脂肪肝を肝臓だけの問題として捉えず、全身の健康に関わる疾患として啓発していくことが欠かせません。

健診制度においては、受診勧奨基準がALT>50U/Lのままであることが大きな課題です。真の基準値といえるALT>30U/Lが、肝臓からの重要な危険信号であることを広く知っていただきたいと思います。また、危険な脂肪肝を効率よく絞り込む指標として有用なFIB-4 indexを計算するためにも、特定健診に血小板数の測定を組み込むべきです。血小板は血液疾患の評価のうえでも重要な指標ですので、血液・肝臓・消化器の領域が連携し、国に働きかけていくことが必要だと感じています。

さらに、血液検査はもちろん、エコーによる脂肪量の可視化技術や肝硬度を評価する指標を組み合わせ、肝臓の状態を“多面的に”評価することも今後ますます重要になります。現時点ではエビデンスが十分に確立しているわけではありませんが、脂肪は“心血管イベント”、線維化は“肝臓のイベント”に関連している可能性があり、変化を見ることが将来的なリスクの評価につながるかもしれません。

最後に、皆さんへのメッセージとしてお伝えしたいのは、「脂肪肝は早く気づけば改善できる」ということです。脂肪肝について正しい知識を持ち、気になる数値があれば積極的に受診していただくことが、将来の肝がんや心臓病を防ぐ第一歩になります。ご自身の健康のために、ぜひ肝臓の状態に目を向けていただきたいと思います。

国家公務員共済組合連合会

虎の門病院


〒105-8470
東京都港区虎ノ門2-2-2


PROFILE

滋賀医科大学卒業後、同大学消化器・血液内科助教を経て兵庫医科大学に着任。肝胆膵領域を中心に内科診療と超音波診断に携わり、教育・研究にも従事している。日本内科学会、日本肝臓学会、日本消化器病学会、日本超音波医学会などの専門医・指導医。医学博士。

近年、日本人でも脂肪肝の増加が著しく、いかに脂肪肝を効率よく拾い上げるかは重要な問題です。
しかし血液検査だけで脂肪肝を診断するのは難しく、
主に超音波が用いられてきましたが、課題もあり、まだ十分とは言えません。
こうした課題を補う技術として注目されているのが、超音波診断装置に搭載されたATI(Attenuation Imaging)です。
ATIの有用性に早くから着目し、標準化するための多施設共同研究「ATiMIC Study」を主導した西村貴士先生に、
ATIが拓く脂肪肝診療の可能性と研究成果について伺いました。
取材日:2025年11月26日(兵庫医科大学)

日常診療で広く使える
脂肪肝の定量評価を求めて

脂肪肝は、肝臓の中だけで完結する病気ではありません。脳心血管疾患や肝臓がん以外の悪性腫瘍など、全身の健康リスクと深く関係しているという認識が、近年ますます重要になっています。日本人は欧米と比べると、いわゆる高度肥満の方の絶対数は少ないとはいえ、体質的な影響もあり、痩せているのに脂肪肝の方も多いと感じます。「気付かないまま進行してしまう」という脂肪肝の特徴から、早期に拾い上げ、適切に層別化し、未来のリスクを見据えて介入できる仕組みをどう作るかは、肝臓診療における大きな課題といえます。

脂肪肝診断のゴールドスタンダードは肝生検とされていますが、お腹から肝臓に直接針を刺して組織を採取するため患者さんの負担が大きく、また一部の肝組織しか取れないため、肝臓全体の状態を反映していない可能性もあります。そのため近年ではMRI-PDFFという手法や、専用の超音波機器による診断法が採用されてきました。MRI-PDFFは、一度撮れば肝臓全体を評価できるという大きなメリットがあり、脂肪が多く沈着しているところと、少ないところのばらつきも含めて評価できるので、脂肪肝の定量評価としては非常に優れています。ただし、検査コストが高く、また患者さんによっては検査ができない場合もあり、検査そのものへのハードルがあります。

一方で、汎用エコーは多くの医療機関に導入されているためアクセスしやすく、コストも低い。その点からも、肝臓内の脂肪量を数値化できるエコーのATI(Attenuation Imaging)機能に注目していました。脂肪肝の定義は、病理学的には「肝細胞の5%以上に中性脂肪がついている状態」です。スクリーニングには従来汎用エコーの白黒画像(Bモード)が用いられてきましたが、明確に脂肪肝と判断できるのは、脂肪が20~30%以上あるような症例です。5〜10%程度の“軽い脂肪肝”をBモードだけで拾い上げるのは、まだ難しいところがあります。Bモードでの所見も参照しつつ、ATIによって客観的な数値が得られれば、「日常診療で使える定量評価」という意味での優位性は非常に大きいと考えられます。

脂肪量を可視化する「ATI」とは

ATI(Attenuation Imaging) は、超音波を使って肝臓の脂肪量を“見える化”する技術です。脂肪が多い肝臓ほど、超音波は途中で弱まりやすくなります。ATIはその“弱まり方(減衰)”を計算し、脂肪の量を客観的な数字として表示します。これまで脂肪肝の正確な評価にはMRIや生検など、負担の大きい検査が必要でしたが、ATIは普段のエコー検査の延長で手軽に測定できるのが特徴です。軽度の脂肪肝でも評価しやすく、早期発見に役立つ新しい指標として注目されています。

「超音波の面白さはその場で見られるリアルタイム性。探求しがいのある医療機器です」と語る西村先生。

ATIを共通言語にするための
多施設共同研究をスタート

ATIに関する報告はこれまでも存在していましたが、その多くは単施設研究で、得られる結果はどうしても「その施設だけの基準」に留まってしまう側面がありました。比較する指標や測定条件、診断の基準値を揃え、ATIを全国の医療現場で安心して活用できる指標とするには、こうしたばらつきを取り除き、統一された条件で診断能を検証する必要があります。そこで、日本人を対象にしたATIによる評価基準の標準化を目指し、13の施設が連携するATiMIC Study(アトミックスタディ)が立ち上がったのです。

私たち兵庫医科大学が主体となって、ATIの診断能を評価するために、肝生検とMRI-PDFFを参照基準とする検査データを集めました。研究を設計するにあたり、まず取り組んだのが測定プロトコルの標準化です。ATIをどの範囲で、どの条件で測定するのかといった点を一つずつ検討し、協力施設が同じ手順で検査を行えるよう整備しました。装置設定や測定条件の標準化については、キヤノンが技術的な調整を担当し、全国の各施設でATIを同じ条件で測定できるよう支援を受けました。研究の基盤を整えるうえで、非常に重要な工程だったと感じています。
複数の施設が参加する研究では、どうしても経験値や機器操作に差が生じます。参照基準としてのMRI-PDFFの測定については、熟練した施設が測定手順を共有したり、必要に応じて測定をやり直したりしながら、協力してデータの質をそろえる工夫を重ねていきました。また、約1,700例にものぼるデータベースへの入力内容を確認し、外れ値が出た症例では一例ずつ記録と画像を精査するなど、地道な確認作業も欠かせません。病理標本の診断依頼をする際には、必要以上の臨床情報が評価に影響しないよう調整し、公平性を担保するなど、細かな配慮も求められました。こうした裏方の作業を積み重ねることで、一貫性と信頼性を保つことができたと感じています。

脂肪定量の従来指標と
同等の精度を示したATI

ATiMIC Studyで得られた最も大きな知見は、ATIが従来、脂肪定量のリファレンスとして用いられるMRI-PDFFに匹敵する精度を示した点です。超音波という手軽な医療機器でありながら、高精度かつ客観的な脂肪量評価が可能であることが明らかになりました。特に、軽度脂肪肝に対しても評価が可能であることは重要です。症状がないうちから脂肪量を定量的に捉えることで、治療介入の判断や経過観察の方針をこれまで以上に精密に立てることができ、ATIが広く普及するための土台が整った手応えを強く感じています。

診断・治療・フォローの一連で
ATIが活用される未来へ

脂肪肝と初めて診断される多くの患者さんは、健診や一般外来で指摘されます。この“入口”の段階でATIを実施できれば、軽度脂肪肝の拾い上げが確実に進み、その後の生活改善や治療の方向づけを早い段階で行えるようになるはずです。ATIは幅広いグレードのエコーに搭載されている機能であり、開業医の先生方や健診施設でも比較的取り入れやすく、脂肪肝診療を大きく変える可能性を秘めていると感じています。診断機器の普及と、測定法の標準化がある程度進んだ今、次のステップは「検査する側・解釈する側の教育」が必要です。論文やガイドラインを通じて知識を共有し、全国の施設で同じレベルの運用ができるようになれば、この研究の大きな目標が達成できると考えています。

脂肪肝を早期に発見し、適切にフォローし、進行を防いでいく。ATIは、その一連のプロセスを支える重要な技術として、今後さらに広く活用されていくでしょう。「どうすれば患者さんの利益になるのか」を軸に、今後も研究成果を日常診療へと還元しながら、脂肪肝診療の質を高めていきたいです。

兵庫医科大学


〒663-8501
兵庫県西宮市武庫川町1-1


PROFILE

旭川医科大学第三内科で肝臓グループの中心として診療・教育に携わり、2012年より名寄市立総合病院副院長に就任。専門は肝臓病学と超音波診断学で、複数の専門医・指導医資格を持つ。検査結果を理屈に基づいて丁寧に説明し、患者が“腑に落ちる”診療を大切にしている。

北海道・上川北部は、広大なエリアに医療機関が点在し、医療アクセスにも独自の課題を抱えています。
名寄市立総合病院は、その中心的な医療機関としてさまざまな役割を担ってきました。
医師不足や高齢化が進むなか、鈴木康秋先生は、脂肪肝という身近でありながら見過ごされやすい病気に対して、
エコーのATI(Attenuation Imaging)機能やMRIなどを活用した診療・啓発・地域連携に取り組んでいます。
本稿では、地域医療の現場から見えてきた課題と、これからのアプローチについてお話を伺いました。
取材日:2025年11月11日(名寄市立総合病院)

広大な医療圏が抱える
脂肪肝の見えない課題

私が勤務する名寄市立総合病院は、日本最北の総合病院です。放射線科を除くほぼすべての診療科が揃い、旭川より北から稚内まで、四国とほぼ同じ広さの医療圏をカバーしています。私はこれまでこの地域で長らく脂肪肝の診療に携わってきましたが、都市部とは少し異なる課題を抱えています。一つは消化器専門医が多いとはいえず、日常診療の中で脂肪肝が十分に意識されにくい面があります。またこの地域は一次産業に従事されている方が多く、繁忙期には通院よりも仕事が優先されてしまうことや、高齢の方は医療情報に触れる機会が限られていることもあり、健康管理に目が向きにくいという特性も。加えて、お酒を飲む習慣が根強く、冬季はどうしても家にこもりがちです。こうした生活環境も相まって、脂肪肝が進行してから受診されるケースが決して少なくありません。放っておいてよい病気ではないことを知ってもらうには、医療者側の働きかけと同時に、地域の皆さんへの分かりやすい情報提供が欠かせないと感じています。

病院を飛び出して
脂肪肝啓発の場をつくる

脂肪肝について多くの方に知っていただくためには、院内だけでなく、院外に向けた取り組みも大切です。これまでも講演や勉強会を続けてきましたが、より身近に“気付く機会”をつくる必要があると考え、ショッピングモール内で行われた「なよろ健康まつり」で、無料のエコー検査を行いました。当日は臨床検査技師や肝炎医療コーディネーターが中心となって検査を担当し、エコーのATI機能を使った無料脂肪肝測定を実施。結果に応じて医師や栄養士がその場で健康相談を行いました。また、子ども向けには果物が入ったゼリーを使った“エコー体験”も用意し、身体の中を見る技術に興味を持ってもらう工夫をしました。お子さんが楽しそうに体験する様子をきっかけに、ご家族も「せっかくだから診てもらおうか」と検査に前向きになる場面もあり、家族全体で脂肪肝について知る入口になったと感じています。

検査の結果、24名中13名が脂肪肝と判定され、そのうち数名が外来受診へつながりました。自分の状態を数値として把握することが、生活習慣を見直すきっかけになることを改めて確認できた取り組みです。今後も、同様のイベント参加やエコーを使った出張診断など、地域の皆さんが参加しやすい形で啓発活動を続けていきたいと考えています。

「なよろ健康まつり」では、ショッピングモールにエコーを設置し、エコー体験や脂肪肝チェックを実施
名寄市立総合病院には肝炎医療コーディネーターも数多く在籍。チームで脂肪肝の啓発活動を行う

「共通言語」をつくり
地域で診る脂肪肝対策

専門医不足の課題を抱えるこの地域では、医療機関への啓発も重要です。脂肪肝の診療を適切に進めていくためには、まず“評価の基準”を揃える必要があります。例えば肝臓の状態の指標となる血液検査のALT値については、施設によって基準値がまちまちで、日本肝臓学会が提唱している「ALT30以上は追加検査を検討」という基準が十分に浸透していない現状があります。そこで私は、地域の医療機関向けの講演や勉強会を通じて、脂肪肝を疑うポイントや、重症度の目安となるFIB-4 indexの活用などを共有してきました。そのうえで、危険な脂肪肝が疑われる方を名寄市立総合病院に紹介してもらい、進行リスクが高いと判断される方は当院で治療を開始します。リスクが比較的低い方については、地域の医療機関で経過を見てもらえるようにし、医療資源を適材適所で活用できる体制をつくっています。

理想的には、かかりつけ医の先生方にもエコーのATI機能を使って脂肪肝の段階を把握していただけると、より正確な診断・フォローができるのではと感じています。特にATIは判断に迷うような軽度の脂肪肝の診断がしやすく、また他の指標も含めたレーダーチャートのようなグラフで表示できるため、患者さんが自分の状態を理解しやすく、モチベーション強化にもつながります。ATIは診断にも受診後のフォローにも、患者教育にも役立つ機能です。そこで私は、脂肪肝の状態を把握できる「NANAアルゴリズム」という指標をつくりました。これはエコーのATI機能やMRIなどを用いて、肝臓の状態を評価する際に重要となる「線維化」「脂肪の量」「炎症の程度」を総合的に評価するものです。これを共通言語として広く共有していくことで、エコーを身近な医療機関で活用し、地域の医療機関間での連携体制が円滑に進む仕組みを整えたいと考えています。

ICT&診療科目間連携で
広がる地域医療の可能性

また、スムーズな連携には医療機関同士が情報を共有できる環境づくりも欠かせません。当院ではこれまでも、検査結果や画像データ、処方情報などの診療情報を安全にやりとりできるICT(情報通信技術)基盤を整備し、通常の外来や救急搬送で役立てています。これを応用し、いずれは「上川北部脂肪肝診療ネットワーク」を立ち上げ、患者さんの状態を共有しながら適切なタイミングで専門医につなぐ診療体制をつくっていきたいですね。

さらに院内では、循環器内科や糖尿病・代謝内科との連携を強め、ひとりの患者さんを複数の視点で評価・フォローする仕組みづくりを進めています。脂肪肝、動脈硬化、糖尿病は互いに関連が深いため、「心血管リスク予防外来」のような形で、複数の診療科が一体となった外来をつくれないか、と検討を進めています。一つの外来で総合的にリスクを判断できれば、患者さんにとっても、地域医療としても大きなメリットになるはずです。
名寄市立総合病院は、急性期から在宅、そして予防までを一貫して支える“地域のワンストップ拠点”を目指しています。その中で脂肪肝診療は、生活習慣病対策の入口として大きな役割を担う領域です。市民向け啓発、地域の医療機関との協力、ICTを活かした連携などの取り組みを積み重ねながら、上川北部全体で脂肪肝に向き合う体制を育てていきたいと考えています。その際、エコーで脂肪の状態を分かりやすく示せるATIのような指標があることは、共通のものさしを持つうえで、一つの支えになるはずです。これからも、地域の皆さんが安心して暮らせる医療の実現に、一歩ずつ取り組んでいきます。

※FIB-4 index … 血液検査のALT(GPT)、AST(GOT)、血小板数、年齢の4つの項目から、肝臓の線維化の進行リスクを評価する計算式

名寄市立総合病院


〒096-8511
北海道名寄市西7条南8-1


PROFILE

佐賀大学医学部教授、肝疾患センターセンター長、特任教授を経て、現在、医療法人ロコメディカル 江口病院理事長。専門分野はウイルス性肝疾患、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患。主な著書に「見て読んでわかるNASH/NAFLD診療」「症例でわかるNASH/NAFLDの診断と治療」等がある。

佐賀県のウイルス性肝炎対策における「佐賀方式」を確立させ、
肝がん死亡率全国ワーストワン脱却の立役者として知られる江口先生。
ウイルス性肝炎に続き、脂肪肝の対策・治療にも精力的に取り組んでおられます。
キヤノンとの「脂肪肝啓発フライヤー」制作の経緯をはじめ、
病院内の治療だけでは難しい「生活習慣の改善」という難問にどのように向き合っているのか、
詳しくお聞きしました。
取材日:2025年9月24日(医療法人ロコメディカル 江口病院)

地域ぐるみで挑んだ
佐賀方式の実践

祖父や父も消化器の医師であったことから、ごく自然に消化器内科の道へ進み、臨床を主戦場に肝疾患の対策に取り組んできました。転機は、佐賀県の肝がん死亡率全国1位という汚名を返上するための一大プロジェクトの総責任者として、「佐賀方式」の確立に携わったことです。私たちはコンサルティングファームの知見も取り入れて論点整理を進め、受検→受診→受療→フォローアップという患者さんの道のりを、官学民の関係者が同じ絵を見て動けるよう1枚のチャートに整理しました。またテレビや新聞、Web、地域イベントを束ねたマルチチャネル・マルチメディアの啓発で認知の裾野を広げつつ、医療現場ではメッセージの言い回しや次の受診行動の促し方まで均一のプロセスにして共有。結果として、県全体で足並みが整い、いわば肝疾患対策のエコシステムが回り始めたのです。
この取り組みは国境を越えて広がりました。2016年以降、モンゴルやベトナムでは現地の医療者と肝炎医療コーディネーター養成に着手し、各地を訪れては1日数十件、時に100名超のスクリーニングを行ってきました。最近では、ベトナムや西アフリカのブルキナファソでも、NPOと連携して佐賀方式を根付かせる試みに挑戦しています。

肝疾患診療連携エコシステム

キヤノンと共同で作成した肝疾患啓発フライヤー。
下記よりフライヤーのPDFをダウンロードいただけます
https://www.medical.canon/jp/made-for-life-magazine/pdf/J000250-00.pdf?utm_source=flyer_fattyliver&utm_medium=qr&utm_campaign=mflvol6

人を動かす「行動経済学」を
脂肪肝の治療に活かす

ウイルス性肝炎の対策が軌道に乗ったころ、課題は脂肪肝へと移りました。無症状で気づきにくい疾患をどう見える化し、どう行動を変えるか――ここに、「佐賀方式」で学んだ行動経済学を応用させることにしました。

無症状が当たり前の病気ですから、まず“動いてもらう理由”を短い時間で腹落ちさせる必要があります。医療・保健の世界でいうところの「行動変容ステージ」に沿って考えると、無関心期にある患者さんを次のステップである関心期、準備期、実行期・維持期へと進めるには、①必要性(治療が要る)②重大性(放置できない)③緊急性(進行前に今動く)の3つを漏れなく伝えるのが有効です。そこで、キヤノンと「肝疾患啓発フライヤー」を共同制作しました。一般には「脂肪肝=肝臓の周りに脂肪がつく」と捉えられがちですが、実際は肝細胞の中に脂肪がたまる病態であること、そして肝硬変へ至るプロセスを図でやさしく示し、医療者と患者さんの認識ギャップを埋める表現にこだわりました。キヤノンをパートナーに選んだのは、当院では長年キヤノンのエコーを使用しており、信頼があったからです。このフライヤーは患者さんの意識を変えるきっかけづくりに重宝しています。ベトナムで実施した肝炎対策プロジェクトのイベントでは、現地の言語に翻訳した資料をキヤノンと共同制作し、脂肪肝への理解促進に役立てました。

「脂肪肝の治療は、自分の肝臓を守るコツを学ぶことがとにかく重要」と語る江口先生。
医学的な正しさを伝えるだけでなく、患者さんとのコミュニケーションにも重点を置く。

病院ぐるみで仕掛ける
「次に来てもらう」しくみ

脂肪肝治療は短距離走ではなく長距離走です。だから外来は “叱られる”場所ではなく、“褒められる”場所にすること。来院のたびに小さな達成感が残れば、自然と「次も行こう」という気持ちに変わります。
そのために重要なポイントは「見える化」です。エコーやCTの画像を前回・今回で並べ、正常肝の見本画像とも見比べながら状態を説明します。また人体模型を使って、脂肪のつき方や臓器の位置関係を立体で確認。さらにキヤノンのエコーに搭載された技術で肝臓の脂肪化や硬さの程度を数値で計り、「どこが良くなり、どこが課題か」を一緒に整理します。うまくいった方はエコーやCTの画像をご自身のスマホで撮影し、改善した実感を持ち帰ってもらいます。画像で気づき、数値で確証し、効果を体感する――この三段重ねが、納得感につながり、次の一歩の後押しとなるのです。

次に来院間隔とハードルの設計です。最初は3か月など短めの間隔で、背伸びしない目標を合意します。甘いものやアルコールの依存があるケースでも、いきなりやめさせるのではなく、まずは少しだけ減らす。ハードルを上げすぎないことが重要です。年末年始など生活リズムが乱れやすい直前にチェックを置くのもポイント。よくなれば次回を少し先に、停滞すれば細かく刻んで調整します。

患者さんへの声かけは、行動変容ステージの段階にあわせてフレームに分け、段階的に切り替えます。関心期の入り口ではロスフレーム(損失回避)を使い、「このままだと心筋梗塞・脳卒中のリスクが上がる」など、失うものを具体化して“今やる意味”を共有します。変化が出始めたらゲインフレーム(自己効力感)へ切り替え、「ここが下がった」「ここは維持できた」と称賛を重ねます。病院全体での支援のベクトルを揃えるため、検査オーダーや申し送りの機会を生かして、管理栄養士・技師・看護師・クラークまで声かけのトーンを統一しています。

説明は腹落ち最優先です。薬は「血圧を下げる薬」ではなく「腎臓の血管を広げて負担を軽くする薬」のように作用部位で説明します。エコー画像の見方も、解剖学の基礎に沿いつつ、患者さんが理解しやすいようレクチャー。信頼できる情報源も共有するなど、 “分からない”を“分かる”に変えるのが重要です。良い変化を強調して一緒に喜ぶと、さらに良い効果が生まれる。そして行動が続く。これは臨床で何度も目にしてきました。数値が少し良くなった、画像の明るさが変わった、体が軽くなった――その小さな“勝ち”が、次の来院の動機につながっていきます。

人の行動は数値だけでも、言葉だけでも変わりません。科学的な評価軸で変化を確認し、チーム全体で声をそろえて行動を後押しする。この両輪を臨床に実装していくことが、脂肪肝のような慢性疾患を「続けられる治療」へと変える鍵になると考えています。

医療法人 ロコメディカル

江口病院


〒845-0032
佐賀県小城市三日月町金田1178−1


患者さんの声

病気と向き合う長い道のりを
支え続ける “変化の実感” と伴走者

江口先生のもとで脂肪肝治療に取り組む副島さん。生活習慣の改善という
長い道のりを歩み続けるには、通院や検査を通して自分の状態を客観視することや、
医療者と二人三脚で前向きな気持ちを保つことが欠かせないといいます。
日々の思いや工夫について、お話をお聞きしました。

副島 健生 氏

三度の挑戦を越えて
C型肝炎を克服

私がC型肝炎を発症したのは15歳のときです。しかし、症状はほとんどないまま高校、大学へと進み、その後は小学校教員として働いていました。30歳を過ぎたころ、インターフェロン治療が登場し、2度の治療に挑戦しましたが、完治には至らず年齢とともに不安は増していきました。そんなとき、人間ドックを受けに来た江口病院で、保健師さんから江口先生を紹介していただきました。今は薬も改善されているからという先生の言葉を信じて、3度目のインターフェロン治療に挑戦。半年の注射と投薬を経て、ようやくC型肝炎を克服できました。

ウイルス性肝炎は治癒しましたが、脂肪肝があるため通院は継続しています。そんな中で肝臓がんが見つかりました。肝臓病とは長い付き合いでしたから、「ついにこの日が来たか」と思いとてもショックでした。でも、フォローしていたので初期で手術治療ができました。自覚症状がまったくなかったので、フォローアップの大切さを改めて痛感しました。現在も3か月ごとにエコーとCT検査を交互に受けています。

客観的な指標が
治療のモチベーションを高める

脂肪肝の対策として、管理栄養士さんの指導のもとで食事療法に取り組んでいます。とはいえ、生来食べることが好きなので、なかなか思うようにはいきません。若い頃から病気が身近にあったこともあり、人一倍健康には気を遣っているつもりですが、生活習慣を変えるのは大変です。

脂肪肝治療のいちばんの難しさは、自覚症状がほとんどないことだと思います。熱や痛みがあれば危機感を抱けますが、「明日からでもいいか」と先延ばしにしがちです。正常な状態から病気までが連続的で、いま自分がどの状態にあるのか分かりにくく、つい都合よく解釈してしまう―― その結果、ある日突然肝硬変や肝がんと診断されるという怖さがあります。だからこそ、客観的な指標で現在地を見える化できれば、治療のモチベーションは大きく変わります。前回からの変化が分かれば、「きっとよくなる」と思い続けられるからです。

私も普段の生活では病気を意識することはほとんどありません。ただ、3か月ごとの検査の日だけは「病人モード」になります。先生や検査技師のちょっとした仕草にも、ついドキッとしてしまいます。不安なまま診察室に入ると、エコーやCT画像を前回所見と照らし合わせ、色調や形の変化など丁寧に説明を受けながら先生との“答え合わせ”が始まります。
江口先生はいつも明るくポジティブなので、良くなっている手応えを実感させてくださいます。次回の予約を終えるころには気持ちがすっかり前向きになり、「もっと良くなってここに来るぞ」という思いが、次の検査までのエネルギーになります。病院を出て家族に無事を報告するときが、一番ほっとする瞬間です。

支えられた恩返しを
次の世代へつなぐ

江口先生に出会えなければ、私は今ここにいません。先生を通じて最前線の医療を享受できたことで、C型肝炎を克服し、フォローアップの中でがんも早期に見つけることができました。以前、肝炎対策プロジェクトのCM出演依頼を受けたのも、この取材を受けたのも、ずっと背負ってきた『病気』という重荷を、先生がおろしてくれたことへの恩返しだと思っています。今私はウイルス性肝炎をはじめとする感染症の差別・偏見をなくすためのプロジェクトに携わり、児童・生徒向けの教材づくりなどにも取り組んでいます。患者としてつらいこと、嬉しいことをたくさん味わってきましたので、その経験を活かして社会に貢献していけたらと思っています。

※インターフェロン治療 … ウイルス性の病気やがんに使われる、免疫系の働きを助ける物質を用いた薬の投薬による治療法