私たちは、島しょ部の医療機関とともに
日本の医療の未来を模索しています。

case01 長崎県上五島病院 様

少子高齢化の波が押し寄せてきた日本。さまざまな問題の中でも、優先して解決すべき項目のひとつに『医療』が挙げられます。すでに、高齢者の患者は急増。その一方で、高齢者が最も関わる内科や外科等の医師や技師の成り手は、減少の一途を辿っています。この傾向は地方へ行くほど強く、島しょ部はその最たる例といえるでしょう。この過酷な環境を突き付けられ、改善に取り組み続けてきたのが、長崎県・五島列島の中通島にある長崎県上五島病院様です。どのような医療が島で展開され、人々のくらしを支えているのか。私たちもいずれ直面する未来を見据えて、新上五島町を訪問しました。

課題先進地域、新上五島町。

日本の総人口は、平成28年10月1日現在、1億2,693万人。そのうち、65歳以上の高齢者人口は3,459万人に上ります。高齢者が総人口に占める割合(=高齢化率)の全国平均は、27.3%。今後、この高齢化率は右肩上がりに増加し、2025年には30.0%、2050年には37.7%になると予想されています(いずれの数値も内閣府webサイト掲載の「平成29年版高齢社会白書」参照)。
対して、長崎県上五島病院が位置する新上五島町の高齢化率は、2015年の時点で約37.7%(日本医師会調べ)。つまり、日本の2050年代の状況が、すでに新上五島町に出現しているといえます。
そこで私たちは、早速、諸問題の解決に取り組まれている長崎県上五島病院に向かい、島しょ医療の最前線で実践している取り組みについてお話を伺いました。

DATA 長崎県上五島病院

所在地
〒857-4404  長崎県南松浦郡新上五島町青方郷1549-11
総合病院(救急告示病院、へき地医療拠点病院、災害拠点病院等の診療機能あり)
病床数
186床
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Made for Life Special -前編- 「課題先進地域における医療の実像」

島しょ医療には、高性能な画像診断装置と
迅速なメンテナンス体制が求められている。

お話いただいた4名の方

長崎県上五島病院 院長 八坂貴宏

長崎県上五島病院
医療情報部長 整形外科医
一宮邦訓

長崎県上五島病院 放射線科
診療放射線技師長
近藤和久

長崎県上五島病院 放射線科
診療放射線主任技師
安田貴明

新上五島町における医療の現状

圧倒的な医療系の人材不足。
高性能画像診断装置は
現状打破の立役者。

八坂院長
新上五島町に限らず、へき地医療の最大の問題点は、人材不足です。当院でも医師はもちろん、看護スタッフや介護士すら足りません。人材確保は、以前から深刻なテーマでした。一方で、病気を予防することや早期発見することにより、医師への過度な需要を減らすことも、へき地医療においては大切な視点です。特に近年は画像診断装置の進歩が著しく、数年前では考えられなかったほど高精細になりました。当院は、CTを筆頭にキヤノンメディカルシステムズ製の画像診断装置を導入し、検診や診断の精度を上げることにより、島内の医療全体の質を向上させています。
安田技師
島というロケーションも、課題のひとつです。起伏が激しく、道路も入り組んでいるため、思ったよりも移動に時間がかかります。患者さんは片道1時間以上のバスで通院したり、船で検査に来る方もいらっしゃいます。現在は、島内の2つの診療所では整形などの専門の診療科は上五島病院の派遣医師による診療が行われており、患者さんが移動しなくてもその地域で診療を受けることができます。

それを助けているのがIT化を推進して構築した各医療拠点間のネットワークだと思います。町のイントラネットを使用し、電子カルテや放射線科システム(RIS)・画像データ(PACS)は上五島病院と共用のサーバーを使用していますので、上五島病院の診療情報や画像データを各診療所で確認したり、島内の2か所の診療所でもCTなどの検査が可能なため、各診療所で撮影した画像を上五島病院での診察に使用し、双方向の医療を行うことが可能です。ネットワークの構築ではキヤノンメディカルシステムズの皆さんには大変お世話になりました。
八坂院長
島には、複数の病気を患っているお年寄りが多数おられます。その観点からは、問題を抱えている部位や疾患だけを診るのではなく、患者さんの心理や立場なども考慮した総合的な『人を診る医療』の能力、いわゆる全人的医療が大切になります。一方で、可能な限り、島内で医療を完結したい。そうなると、専門科のスキルが必要になります。つまり、新上五島町のような環境では、専門科医療と全人的医療の両立が必要不可欠。人材不足という状況を、高性能機器群でフォローしているのです。
上五島病院の取り組みと歴史

病院、地域、行政、すべてが主人公。
そこが島しょ医療のスタートライン。

八坂院長
1960年に開院した上五島町立国民健康保険診療所が、当院の始まりです。1968年に長崎県と離島の20市町村が共同で設立した『長崎県離島医療圏組合(現:長崎県病院企業団NHA)』が運営する病院となりました。同組合は、相互補完による地域の医師不足解消と、保健や福祉の分野を拡充することを目的として設立されたものです。1986年には、150床の新病院を建設。以後、時代の流れとともに8回ほど増改築を繰り返し、現在の186床の病院となりました。この20年間で、さまざまな医療機能を拡充しています。さらに、リハビリ環境の包括ケア病床や療養型病床を充実。いまでは、地域の老人ホームや老健施設と連携しながら地域包括ケア・包括医療を行うことも可能になっています。

当院の理念は、「地域と共に歩み、信頼され親しまれる病院」です。医療者と患者さん、あるいは病院と地域の信頼関係は、島しょ医療において基本的根幹を成すもの。そこからさらに一歩踏み込んで、「一緒に成長し、生きていく」という思いを込めました。ですから、病院で行う一般的な医療という枠から外に出て、健康に長く生きるための啓蒙活動も行っています。具体的には、情報誌『かっとっぽ』をつくり、「上五島病院フェスタ」という健康推進のイベントを開催。また、地域の公民館に出かけて住民講話を行い、住民の健康意識を高め、検診の受診率向上を目指しています。

結果的に、病気の人を減らし、医師への負担を減らす取り組みです。 新上五島町のような島においては、病院、行政、地域が連携して動かなければ、目標を達成できません。たとえば、電子カルテの導入や、各診療所を町のイントラネットで結んで実現したIT化も、結局は10年の期間が必要でした。院内の理解、地域住民からの理解、行政からの協力、これらのすべてが整って初めて数年前にシステム構築が完成しました。いまでは、救急で運びこまれてきた患者さんの既往歴や感染症、薬の副作用、これまでの検診結果など、すべてを理解した上でケアが可能です。
画像診断装置の重要性

高性能機器は、島しょ部での専門的な診断を支える。

安田技師
画像診断装置は現在の医療に欠かすことができません。画像診断装置により専門の設備、医師やメディカルスタッフが揃っていないとできなかった検査が、設備や人が揃っていなくてもできるようになりました。例えば、冠動脈疾患が疑われた患者さんはすべて島外の病院で診断や治療を受けに行っていました。ただ、本土の専門医療機関への頻繁な行き来は、物理的にも経済的にも大きな負担でした。冠動脈疾患は心臓カテーテル検査が大変有効な方法です。島で心臓カテーテル検査を行えることができればよかったのですが、それには、設備投資や医師の確保が大変困難と言われてました。
そのような状況を2006年より始まった心臓CT検査は、打開してくれたと思います。冠動脈疾患を疑う患者さんは島で心臓CT検査を行い、本当に心臓カテーテル検査及び治療が必要な方を医師がきちんと診断し、トレアージできるようになりました。これは、人材不足の島にとっては、画期的なことだと医師が喜んでいました。機器の高性能化によりできなかった検査の代用ができ、見えないものが見えるようになることで、診断に及ぼすメリットは大きく、治療の仕方すら変わってきていると思います。2016年からはさらに進化し島しょでも心臓カテーテル検査ができるようになり、常に新しいことにチャレンジしながら高度医療を実践しています。

一般的に最新鋭の機器は、主に都会に導入されて、たくさんの患者さんの検査をしています。それもひとつの有益な使い方ですが、専門病院や大病院がない離島においては、その機器がひとつあるだけでも、島全体でとても大きな恩恵を受けられます。一人の技師として、良い機械を入れて、医師がきちんとした診断を行うことができる画像の提供を行い住民が恩恵を受けられるようにしたいです。
一宮医師
整形領域でも画像診断装置の進歩は大変喜ばしいことです。具体的な一例を申し上げますと、CTの場合、撮影後の画像からインプラントから出るアーチファクトだけを消去できる機能があるのですが、これには助けられています。高精細な画質で、部位のいろんなスライスを見ることができるため、手術の適応を決めやすくなりました。
八坂院長
初期診療が正確であるほど、後の治療を的確かつ迅速に行えます。当院のように常勤医師だけで全診療科をまかなえず、専門医不在の診療科がある病院においては、なおのこと初期診療が重要。高性能な画像診断装置が、質の高い初期医療を可能にしてくれています。もし、専門医不在の診療科で入院治療が必要な場合は、長崎県本土の病院を紹介することになりますが、そこまでに正確な検査と診断をしていないと、最適な病院を選択できません。

患者さんの未来を左右してしまいます。そのような機器が無かったずいぶん前の話ですが、当時の医療の常識に従って長崎県本土へ検査に行ってもらったものの異常がなく、すぐに戻ってこられた患者さんがおられました。往復の手間は相当なものですから、申し訳なかったですね。そのようなことは、画像診断装置の導入以来なくなっていますが、より正確な診断をするためにも、機器のさらなる進化に期待しています。病院の方針として、救急車は断りたくないですし、断っていません。この方針を力強く支えてくれているのも、キヤノンメディカルシステムズさんの高性能な画像診断装置です。
画像診断装置のサポート体制について

最短復旧に向けて、
すぐに動いてくれる安心感。

安田技師
キヤノンメディカルシステムズさんは、不具合が起こったときに電話をすると、いの一番に「行きます」と答えてくれます。電話で「ここはどうか」「あそこはどうか」と症状を聞かれ、部品を持ってきてくれたものの…ということや、「離島に行く人がいないので〇〇日待って…などはありません。キヤノンメディカルシステムズさんは、まず来て、プロとして症状を分析してから部品を調達し、最短で直してくれます。故障しない装置が一番ですが…機械ですので故障します。トラブル時「すぐ行きます」とすぐ船に乗ってきてくれることに大きな安心感や信頼感が生まれます。過去には、夜中故障したとき福岡港から上五島の港にAM6:30に着くフェリーで来られて、診察開始までに直してくれたこともありました。
近藤技師長
メンテナンス直後からすぐに機器を使えるわけではありません。立ち上げにも一定時間が必要です。そのようなタイムロスも念頭に入れて、直した時間ではなく、診察が開始できる時間を基準に考えて動いてくれます。こちらから言っていないことでも、気を利かせて対応してくれることが多く、日本のメーカーとしての誇りを感じます。人柄も素晴らしい方ばかりです。
八坂院長
キヤノンメディカルシステムズさんのサポート体制は、迅速で丁寧。画像診断装置は、毎日のように使うものだからこそ、何かあったときは即時対応してほしいのが、島しょ医療従事者の偽らざる気持ちです。新上五島町のように、当院にしか画像診断装置がない場所で、その1台が故障することは、まさしく死活問題。たとえば10台以上の画像診断装置が導入されている長崎市内で1台が壊れても、残る9つ以上の装置で検査ができます。実際にキヤノンメディカルシステムズさんの担当者の中には、離島出身の方もおられるため、細々としたことでも意思の疎通が図りやすいことも特徴のひとつ。離島の宿命をよくご理解いただいているため、電話をしたら大急ぎで駆けつけてくれますし、メンテナンスのついでに他の同社製機器の調子も見てくれるので、安心感が違います。

島は病院と地域、行政など、すべてが密な関係で成り立っています。キヤノンメディカルシステムズさんも、未来を一緒に歩むパートナーとして、島の医療に関わっていただいています。
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